カテゴリ: 植物

名前:シモバシラ
科名:シソ科
草丈:40~70cm
原産地:日本(関東以南)
人気:マイナー

2013年2月17日。
最低気温が零度を下回り(-2℃くらい)、空は晴れ。風無し。
期待に胸を膨らませながら、大阪府立花の文化園に向かいました。

10時過ぎに到着。
そのまま真っ直ぐ、花の文化園の最深部、アジサイ園のさらに奥を目指します。
普段なら訪れる人も無い冬枯れの林の奥から、大きなカメラを担いだお爺さんが…
私と目が合うとニヤリと微笑み「姉ちゃん、できとるで」
なんですって!!
やもたてもたまらず、小走りで現場に向かいました。

あっできてる!できてる!!

シモバシラ 氷柱2
















シモバシラの氷柱ができてる!!

シモバシラとは…あの冬の朝に土中の水分が凍って土を持ち上げる「霜柱」とは別物で、
シソ科の植物の名前です。
秋に白い花を咲かせますが、この花自体は実につまらないもので、草姿にもとりたてて
言うべきものはありません。
この草の真骨頂は冬。
地上部が枯死した後も根が水を吸い上げ続けるため、枯れた茎の裂け目から水分が浸み出し、
それが凍って茎の周囲に氷の柱が出現するのです。
シモバシラ 氷柱














この現象は常に見られるわけではなく、十分に気温が下がらなかったり、雨や雪が降ったり、
風が強かったりするとアウト。なかなかレアなのです。
この日の氷柱は小規模なものでしたが、条件が良ければ一度できた氷柱が溶けずに成長を続け、
もっと高く育ったり、或いは横に広がって白いリボンのような状態になるそうです。

シモバシラ 氷柱3シモバシラ 氷柱4













↑色々な形のシモバシラ。
自然が生み出した芸術ですね。
珍しい植物を撮影できたので、喜び勇んで妹に報告しました。

私:やったーシモバシラ撮ったよ!見て妹ちゃん。
妹:???枯草?どうして枯草を撮ったの、お姉ちゃん。
私:ちがうよー。氷柱がキラキラしてきれいでしょう。
妹:草が枯れてて汚い。草の無い所で撮ればよかったのに。
私:だから枯草を撮ったんじゃなくて、シモバシラっていう植物で、
  枯れた茎から浸み出した水分が凍って氷柱になるの。

妹:それは枯草を撮ったのと違うの?
私:…枯草だね。

枯草でした。

シモバシラの花は9~10月頃に咲きます。
まぁシソ科の花だな、と言った形状の白い花です。

シモバシラ 花シモバシラ













↑生前のシモバシラさん。
良く見ると楚々とした美しい花ですが、花だけを観賞するために植えるほどではないかな…。
枯れた後の方が注目される花と言うのも不思議ですね。
宿根草ですから地上部が枯れても死んだわけではないですけど。

この花をとるために9月に林の奥に行ったところ、ヤブカの群れに取り巻かれたので
あまり良い印象はありません。
さらに何か大きい蜂に追いかけまわされたので、落ち着いて写真が撮れませんでした。
もっと穏やかな気持ちで見られれば良かったのですが。

この氷柱は、他のシソ科植物でもできることがあるそうです。
実家の庭に植わっていた青ジソにはできたことないです。

名前:クレマチス
科名:キンポウゲ科
草丈:つる性
原産地:主に北半球に広く分布
人気:メジャー

大阪府立花の文化園に通い詰めること5年…
ついに、園芸クレマチス16系統全てを撮影することに成功しました。

やった!勝った!RHSに勝った!!!
※RHS…the Royal Horticultural Society(英国王立園芸協会)
名前が格好いいイギリスの園芸協会。総裁はエリザベス女王。
クレマチスの園芸品種を15系統に分けた(日本は独自に1系統を追加)。

まぁ勝ち負けの問題じゃないですし、16系統をそれぞれ数品種撮影した所で膨大な
園芸品種の極一部にすぎないんですけど。

他のクレマチス:お前は未だ我ら一族のほんの一部を撮影したに過ぎぬ…。
        さらにこの世に育種家のある限り、クレマチス一族は永遠に増殖を
        続けるのだ。
原種クレマチス:全世界約300種の我々もお忘れなく!

敵役風に表現すると↑みたいな感じかな。
私としては全品種撮影はどう考えても無理なので、もう満足です。

さて、この度新たに撮影に成功したのはヘラクレフォリア系とヴィタルバ系の2系統。
実はこの2系統、花の文化園にずっといたらしいのですが、4年間見過ごしてました。
今年はちゃんと系統とそれぞれの花期を意識して撮影したのが功を奏したようです。

ヘラクレフォリア系 Heracleifolia Group
…中国などに自生するヘラクレフォリアや日本のクサボタンなどに
 由来する系統。木立性で花は筒形あるいはベル形。

クレマチス・ヘラクレフォリア ニューラブ草姿クレマチス・ヘラクレフォリア ニューラブ














↑「ニューラブ」2013年の7月に花の文化園で撮影。
何と言うかクレマチスっぽくない…庭に生えてたら草刈り対象になりそうです。
鉢に植わった画像から分かるように、つる性ですらありません。
この雑草臭さで4年間私の目を欺いてきたのですね。
でもお花をアップで見ると確かにクレマチスの面影があります。
ずっと見てたら、野趣があってわりといいかも…と思えてきました。


ヴィタルバ系 Vitalba Group
…南ヨーロッパ、西アジアなどに自生するヴィタルバに由来する系統。
 日本のボタンヅルなども含まれる。

クレマチス・ヴィタルバ ボタンヅルクレマチス・ヴィタルバ ボタンヅル指先














↑「ボタンヅル(Clematis appifolia)」2013年の8月18日に花の文化園で撮影。
他のクレマチスが盛りを過ぎた8~9月に咲くせいで、これまで見逃してきました。
花は小さいですが、ちゃんとクレマチスらしい形をしています。
こんなちっちゃい花が“ボタン”ヅルと呼ばれるのは、葉っぱがボタンのそれに
似ているからです。お花は可愛いけど、牡丹の豪華さには比べられません。
花に顔を近づけると、甘い香り…メロンっぽい匂いがします。
今年は暑いせいか、花の文化園では7月下旬からぽつぽつ咲き始めました。

この写真は8月18日。気温は35度超え!!炒り殺されるような日差しの中、決死の覚悟で
撮影してきました。
いつもはちらほら見かける、カメラを構えたお爺さんたちの姿もこの日は無く…
よく探すと数名が日陰で休んでいました。無理しないでね。
そんな灼熱地獄に、なんと長袖・ブーツ着用の一団が!!
毎月第三日曜日は花の文化園の「コスプレの日」なのです…カツラやらマフラーやら、
若さってすごいなぁ…無理しないでね。


クレマチス・シネンシス サキシマボタンヅルクレマチス・シネンシス サキシマボタンヅルUP












↑「サキシマボタンヅル(Clematis cinensis)」2013年の7月28日に花の文化園で撮影。
サキシマ“ボタンヅル”なんですけど、あんまりボタンヅルには似てないです。
そもそも葉っぱが違う…葉っぱがボタンっぽいからボタンヅルなのに。
見た感じ「センニンソウ」によく似ています。
と言うことは、分類するとすればこれはヴィタルバ系じゃなくてフラミュラ系?


ついでにフラミュラ系「センニンソウ(Clematis terniflora)」↓

クレマチス・フラミュラ センニンソウクレマチス・フラミュラ センニンソウUP













2013年の9月7日に花の文化園にて撮影。
ボタンヅルよりは大きいものの、園芸品種に比べれば小ぶりな花が、株の上部を
埋めつくすように咲きます。
匂いはボタンヅルに似て、甘くてちょっと青っぽい香り。
この写真は植物園で撮影しましたが、大阪南部の野山でも普通に自生しています。
花後にできる綿毛を仙人のヒゲに例えて名付けられました。


全然関係ない話ですが、写真を撮りに7/28に花の文化園を徘徊していたら、
クレマチスの鉢の陰から何か茶色いものがピョコっと…
うわぁ、とまこだ!!!(とまこ…四国の一部地域の方言でイタチのこと)
とまこも心底驚いた様子で、私がカメラを向ける前にどこかに逃げて行ってしまいました。
びっくりさせてごめんね、とまこ。
河内長野は自然が豊かです。


一応全系統制覇できて嬉しい限りです。
これも花の文化園様の熱心な蒐集のおかげですね。ありがとうございます。

名前:フリチラリア(ヨウラクユリ)
科名:ユリ科
草丈:20cm~1m
原産地:北半球の温帯
人気:ややマイナー

春にチューリップ目当てに植物園に行ったとき、ふと気が付くと園内の寂しげな一角に
こいつらが咲いています。
目立って美しい花ですが、いまいちメジャーではないようです。
同時期にチューリップ御大が咲くのと、栽培が難しい(らしい)のがよくないのかしら。

フリチラリアという名前はフリティルス(サイコロを入れる箱)に由来しているそうです。
形が似てるらしいのですが…サイコロを入れる箱???馴染みがないなぁ。

比較的よく植えられていて、見た目にも華やかなのは、西アジア周辺が原産の
「フリチラリア・インぺリアリス」…インぺリアリス=帝王の名前にふさわしく、
大型で堂々たる花姿です。

フリチラリア・インぺリアリス ルブラマキシマフリチラリア・インぺリアリス ルブラマキシマUP














↑「フリチラリア・インぺリアリス ルブラマキシマ」
釣鐘状の花が、仏具の飾り「瓔珞」に似ているからということで和名はヨウラクユリ。
私はパイナップルを思い出しました。

比較用パイナップル














↑「パイナップル」ちょっと似てるでしょ?

↓こちらはインぺリアリスの黄花種。

フリチラリア・インぺリアリス ルテアフリチラリア・インぺリアリス ルテアUP
















↑「フリチラリア・インぺリアリス ルテア」
個性的で美しく、春の花壇にこんな花があるのもオシャレだと思います。
フリチラリア・インぺリアリスの英名は「王様の冠(Crown impelial)」というのですが、
黄色い花だと確かにそれっぽいですね。

ペルシアの伝説によればフリチラリアはかつて美しい王妃でしたが、その美貌が
王様の嫉妬をかってしまい、荒野に追われて花に身を変えたそうです。
高貴な姿は、かつての身分の名残だとか…。気の毒ですね。

『花の西洋史事典』によれば、この花の「蜜腺」の美しさが真珠の輝きに例えられ
愛でられた歴史があるらしいのですが…蜜腺?そんなのあったかしら?
基本的に下を向いている花だから分かりにくいなぁ。
・・・これかしら?

フリチラリア・インぺリアリス ルテア蜜腺?
















↑この花弁の付け根にある丸いやつ?
・・・真珠???

フリチラリアの仲間は日本周辺にも分布しています。
その1つが「クロユリ(Fritillaria camtschatcensis)」で、日本では北海道や
本州の高山で見られるようです。camtschatcensisは「カムチャッカの」の意。

クロユリクロユリUP














アイヌの伝説では「愛する人にそっと贈り、相手が手にとれば二人は結ばれる」
という「恋の花」だそうです。
私としては美内すずえ先生のホラー『黒百合の系図』のイメージが強くって、
「呪いの花」としか…咲くと人が死ぬんですよ。

ちなみにこの花、臭いです。
例え「恋の花」だったとしても、プレセントにはしない方がよいですね。

クロユリには黄色い花が咲く変種がありまして、その名も「キバナクロユリ」…
分かりやすいような分かりにくいような、微妙な名前です。

クロユリ2輪黄花クロユリ














↑「クロユリ」と「キバナクロユリ(Fritillaria camtschatcensis f. flavescens)」
flavescensは「黄色っぽい」の意。そのまんまですね。
黄色くなった途端、「クロユリ」の禍々しさや神秘性は消え失せてしまいます。
これなら人も死なないでしょう。

同じく東アジアで見られるのが、漢方薬の原料にもなる「バイモ」。

バイモバイモUP












↑「バイモ(F. verticillata ver. thunbergii)」
漢字では貝母と書き、根っこが貝っぽいのが由来だそうです。
別名の「アミガサユリ」の方がしっくりきますね。
日本には中国から渡来したそうです。

そしてヨーロッパに産するのが「フリチラリア・メレアグリス」。

フリチラリア・メレアグリスフリチラリア・メレアグリスUP













↑「フリチラリア・メレアグリス(F.meleagris)」
インぺリアリスのような豪華さはありませんが、花弁のモザイク模様が独特の
美しさを醸し出しています。
もっとも、この格子状の文様を気味悪く思う人もたくさんいるらしく、英国では
「蛇の頭のフリチラリア(Snake's-head Fritillary)」だとか「死の鈴(Deith Bell)」
などの不吉な名前で呼ばれることもあります。

meleagrisはホロホロチョウの意で、これも格子模様からの命名のようです。

『花の西洋史事典』によれば、フリチラリアの球根も食べられるらしいです。
臭いけど、煮込めば食べられなくもないんだとか。
また、アイヌの伝統的なレシピにはクロユリの球根料理があるようです。
現代を生きる私たちには玉ねぎがあるので、高価なフリチラリア球根を
シチューに入れる必要はありませんが、ちょっと味が気になるなぁ…。

名前:ヒスイカズラ
科名:マメ科
草丈:つる性
原産地:フィリピン(ルソン島)
人気:ややメジャー

青い花というのは人を惹きつける何かを持っているようです。
多分、単に(他の色に比べて)珍しいからだと思います。

そんな青い花の中でも、特異な青色を持っているのがヒスイカズラです。
ルソン島のジャングルからやってきた妖しのフィリッピーナ、
ヒスイカズラさんのお花はこちら↓

ヒスイカズラ 2房


















どうです、このヒスイ色と言うかプラスチック色の花!
私の愛用しているクリアホルダーの色ヒスイカズラUPにそっくりです




















近くで見ると、ちゃんとマメ科の蝶形花ですね。
やや緑がかった水色は、宝石のヒスイに似ている…かな?
どっちかと言えばトルコ石(あるいはクリアホルダー)を思い出す色です。

ただ、咲く寸前のツボミの様子はまさにヒスイ…というか「勾玉」です。

ヒスイカズラ つぼみ














ヒスイカズラ つぼみ下から















昔のまじない師が首から下げてるやつですね。
花柄は紫色で、この花の独特の雰囲気に一役買っています。

こういう色の花が他にないかと言うとそうでもありません。
ユリ科のラケナリア・ヴィリディフロラの青は、かなり
ヒスイカズラに近いものがあるように思います。
ラケナリア・ヴィリディフロラちゃんはこちら↓

ラケナリア ヴィリディフロラ


















ヴィリディフロラ=ヴィリディス(緑色)+フロラ(花)ですので、
青色と言うより緑色押しの花なんですが、
こちらもよく「ヒスイ色」の花として紹介されています。

ヒスイ色かなぁ?
他にも「エメラルドグリーン」と形容される場合もありますが、
それもちょっと違うような…

やっぱり、この色合いと言い、かすかな透明感と言い…
LIHIT LABのクリアホルダー・水色が一番近いと思うのですが。


ヒスイカズラが見たい場合は植物園に。
大阪だと咲くやこの花館で3~4月頃によく咲いてます。
そんな暇がない人は文具売り場に行けば、ヒスイカズラの色を
疑似体験できます。

名前:アリストロキア・ギガンテア
科名:ウマノスズクサ科
草丈:つる性
原産地:ブラジル
人気:マイナー

見た目は全く異なりますが、カンアオイと同じウマノスズクサ科の植物です。
「柿のヘタ(以下)」ことカンアオイさんと「見た目が異なる」と言われると、
ちょっと美人を期待してしまいますよね!
カンアオイとは別の方向に突き抜けた、アリストロキア・ギガンテアさんの
雄姿はこちら↓

アリストロキア・ギガンテア




















・・・なんだか見てはいけないものを見ている気がするのですが。

アリストロキア・ギガンテア 比較




















「ギガンテア」の名を冠するだけあって、とってもビッグサイズです。
手のひらより一回り大きく、そう、例えば人の顔がちょうど収まりそうな…。
つる性で花がほど良い位置に垂れさがっていることと言い、
「人間の顔面に張り付いて体液をちゅうちゅう吸う」ために進化したとしか
思えないこの形状…!




ちょうどよく地面にお花が落ちていたので、裏面を拝見↓

アリストロキア・ギガンテア おもて













アリストロキア・ギガンテア うら













なんか生々しい袋が付いてました。

ツボミの時期は下の通り↓初々しさを感じます。

アリストロキア・ギガンテア つぼみ

















アリストロキア=アリストス(良い)+ロキス(出産)で
花の筒状の部分(裏面の袋のことか?)を胎児に例えてつけられた名前らしいのですが、
確かにそれっぽいと言えばそれっぽいです。
可愛いベビーが出てきそうには思えない花ですが、実際のベビーも
さほど可愛い場所から出てくるわけではないので…。


お仲間、メキシコ産のアリストロキア・トリカウダタちゃん↓

アリストロキア・トリカウダタ


















インベーダーゲームを思い出しましたが、ギガンテアさんよりは愛嬌のある見た目です。
3本出てるチョロッとしたやつは何の役に立つんでしょうね?
それぞれ捻じれたり絡まりあったり、何なのかしら。



ギガンテアさん、ネットで調べたら「異臭がある(アンモニア系)」らしい…
さもありなんという見た目なのですが、近くで見た私は臭いに気がつきませんでした。
臭そうだけど、見た目ほどには、臭くないのかな?
でも見た瞬間に「こいつは臭いだろう」と思わせる感じと言うか、
何というか目に臭いので、もうそれで十分臭いということでいいと思います。


温室がある植物園では良く目にする植物です。
臭いかどうか嗅いで見るのもいいと思います。

↑このページのトップヘ